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AI活用も新しい働き方も、ボトムアップで変化を生む

日本気象協会には、中期経営計画のテーマを推進するための部署横断「経営ビジョン推進プロジェクト」という取り組みがあります。今回の日本気象協会 公式note「Harmonability style」では、「経営ビジョン推進プロジェクト」で2023年に活動した「生成AI活用」を踏まえた最新の動きをご紹介するとともに、過去の「経営ビジョン推進プロジェクト」を振り返ります。

「経営ビジョン推進プロジェクト」とは
日本気象協会の中期経営計画にある事業戦略・組織戦略・人材戦略などのテーマの推進を加速するために生まれた部署横断プロジェクト。若手メンバーを中心に3名以上のチームを構成し、課題解決を目指します。公募型と指名型があり、どちらの場合もアドバイザーとしてマネジメント層のメンバーが伴走します。

「できるだけ何でもまずやってみる、形にしてみる」

2023年に活動した「経営ビジョン推進プロジェクト」のテーマは「生産性向上・新サービス創出のための生成AI活用」。
1年弱のプロジェクト活動期間中にはChatGPTやGitHub Copilotなどを活用した生成AIの業務活用の実験や、全社向けレクチャーを開催するなど、生成AIの利用機会の創出と社内への知識の普及活動を行いました。

「経営ビジョン推進プロジェクト」の実施期間中も、生成AIを取り巻く環境はめまぐるしく変化していきました。多くの期待と課題を抱えながら急速に発展する生成AI。日本気象協会のデータ活用でも戦略的に生成AIを取り入れるために、プロジェクトのメンバーは「できるだけ何でもまずやってみる、形にしてみる」と前向きな気持ちで楽しみながら活動を進めました。

今後、あらゆる仕事において生成AIの活用は必須

プロジェクトの最終提言では「今後、日本気象協会のあらゆる仕事において生成AIの活用は必須」「生成AIを業務システムに組み込むことが重要」と結論づけました。また、生成AIを積極的に利用することで得られる業務時間削減の効果や副次的効果を踏まえて「2024年度は、生成AIを日本気象協会全体で使いこなせるようにしていきたい」という新たな目標をたてました。
これを受けて、2024年5月に「生成AI導入推進連絡会」が立ち上がり、支社なども含めて全社規模で生成AIの利用を推進することになりました。連絡会には、プロジェクトのメンバーが事務局として引き続き参画しています。

プログラミングでの活用や人事課チャットボットまで…各部門で挑戦中

MicrosoftのCopilot forM365などの生成AIを新たに導入したことでセキュリティに配慮した情報も扱いやすくなり、日本気象協会では各部門での生成AI利用が徐々に進んでいます。
 
例えばビジネス部門では、GitHub Copilotをプログラミングのコーディング補助で使うケースが増えてきました。また、気象会社ならではの生成AI活用として、天気の概況文(特定の地域における天気の総合的な状況を簡潔に説明する文章)を作成する実験も行っています。企画を扱う部門では、アイデア出しやコメント作成などで利用しているほか、メールの文案作成や打ち合わせの議事メモ作成で使用している、という事例も出てきました。
 
人事部門では、労務関連で「よくある問い合わせ」に回答できるチャットボットを作成し、試験運用しています。使い勝手や精度の向上など、これから改善していかなければいけない部分もありますが「まずやってみる、形にしてみる」が広がりつつある…それが、日本気象協会での生成AI活用の等身大の姿です。

プロジェクトメンバーが画像生成AIで作った
「ChatGPTを使うのって楽しい!」のイメージイラスト

生成AIの利用機会や習熟度には職員の個人差もあるため、素朴な疑問に答えていくことも欠かせません。研修や、よりカジュアルな「質問に答える会」の開催のほか、チャットスペースの開設、支社が独自で生成AI活用の勉強会を行う予定もあります。地道な活動ですが、職員それぞれが「どんな場面で生成AIを使うと、仕事を効率化できるだろう」と想像力をふくらませ、行動してみることが大切だと考えています。
 
ちなみに、よく使用されている生成AIは部署によって異なるようですが、これは業務特性や利用者個人の好みも影響しているのかもしれません。部門ごとの特徴をつかむことができるのも、部署横断プロジェクトから派生している取り組みならではのメリットです。

プロジェクトメンバー:瀬川出
多くの部署や支社などが生成AI活用に前向きだと感じています。とっかかりの部分は苦労したり上手くいかなかったりしますが、今後きっとうまくいくと思うので、継続が大事だと感じています。
生成AIはあくまで手段ですが、日本気象協会全体で利用しながら徐々に課題解決に結び付け、日本気象協会の企業ミッションである「自然界と調和した社会の創生」を実現できればと思っています。

番外編 ~これまでに実施した「経営ビジョン推進プロジェクト」~

ここまで紹介してきた「生産性向上・新サービス創出のための生成AI活用」は「経営ビジョン推進プロジェクト」の第3弾です。ここからは番外編として、歴代のプロジェクトをご紹介します。

【プロジェクト第1弾】「メディア現業におけるAI導入検討」プロジェクト

2018年に実施した「経営ビジョン推進プロジェクト」の第1弾は「メディア現業におけるAI導入検討」。半年に渡るプロジェクトは、一部メンバーを入れ替えながら2つのステップに分けて進められました。
天気図や気象解説の原稿の作成は、細部に注意を払いながら丁寧に行う必要があります。これはミスなく質の高い情報を届けるために必要なプロセスですが、一定の時間や人員を要するという課題があります。
そこで本プロジェクトでは、まずステップ1でこれらの業務の手順を整理し、AI等の導入によって生産効率向上と品質向上が期待できるプロセスを検討しました。AIを導入した場合の費用対効果を定量的に評価し、システム化に向けた基礎資料の作成も行いました。

一般的な天気図や気象解説の原稿作成のイメージ

2つのステップを経て、精度向上のためのヒントをつかむ

ステップ1の提言を踏まえて、ステップ2ではより踏み込んだ実証実験を行いました。AIを活用した気象解説原稿の作成に挑戦し、文章の自動生成の可能性を探りました。短期間の実証実験でしたが、自動化へのアプローチとして、インプットデータの整理・保存・処理が必須であることが分かったほか、精度向上のための重要なヒントをつかむことができました。
なお、2018年当時は生成AIが一般的に利用できる環境ではなかったため、本プロジェクトでは機械学習やルールベース型AIを取り入れて実証実験を行いました。

プロジェクトメンバー:吉開朋弘
ステップ1は約3ヶ月の短いプロジェクトでしたが、普段の業務では関わりが無かった予報現業の業務内容を知ることができて非常に勉強になりました。また、実際にAIを利用しようとすると、意外と学習に必要な過去データが少ないことが分かり、過去データを残しておくことの大切さに気づくことができました。
当時はAIへ入力する学習データの確保が困難で、結果的に原稿の言い回しパターンをルールベースで指示するという方向性になったのですが、現在はChatGPTを使うと少ないデータでも細かいニュアンスまで表現してくれるので、技術の発展速度は凄いなと感じます。

【プロジェクト第2弾】「誰もが働きやすくやりがいのある会社で、事業収入と利益率を上げよう。」プロジェクト

2019年に実施した「経営ビジョン推進プロジェクト」の第2弾は「誰もが働きやすくやりがいのある会社で、事業収入と利益率を上げよう。」プロジェクト。異なる部署の6名のメンバーが、子育てや介護を担う世代の視点から「誰もが働きやすくやりがいのある職場」を目指して、1年のプロジェクト期間中にさまざまな取り組みを行いました。
 
日本気象協会では若手職員が増え、これまでの職員構成比(年齢、男女比)が変化するフェーズにありました。産育休を取得し、子育てをしながら働く職員が増えたほか、介護や病気を抱えていたり、他にもさまざまな背景を持ちながら働く職員がいるなかで、それぞれのライフステージに合わせた柔軟な働き方や制度のあり方を検討する必要性が高まっていました。
中長期的なキャリア形成を考慮すると、仕事は働きやすいだけでなく、やりがいも大切です。そして企業にとっては事業収入や利益を得られることも、持続可能な組織運営において欠かせません。長いプロジェクト名には、働き方に制約のある特定の人たちのためのプロジェクトではなく、日本気象協会で働くすべての人に関わりのあるプロジェクトであるというメッセージを込めました。

「風土」「制度」「ツール」の観点で実験的な取り組みを複数実施

プロジェクトでは「風土」「制度」「ツール」の3つの観点から、実験的な取り組みを複数行いました。
「風土」では、入社10年目前後までの職員を対象としたアンケート調査、産育休中職員向けの座談会「Welcomeback Meeting」の開催、育休復帰者を迎えるマネージャー向けの研修や経営幹部を対象にした「イクボスセミナー」の開催、経営幹部による「イクボス宣言」を社内報で発信するなどの広報活動を行いました。
 
「Welcomeback Meeting」は、産育休中の職員が子連れで参加できる座談会です。育休復帰後の心理的なハードルを下げ、会社に復帰しやすいフォローアップの機会として、本社オフィスの会議室でオフィシャルイベントとして開催しました。地方で育休取得中の職員は、自身の所属する地方支社・支店に子連れで出社し、オンラインで本社とつないで参加しました。

「制度」と「ツール」では、場所にとらわれない働き方に挑戦するために、2019年当時はまだ環境が整っていなかったリモートワークの実証実験を行いました。
実証実験では、既存ツールで出来ること・出来ないことの洗い出しや必要な要素を抽出しました。メンバーには子育て中の職員が多かったため、時間的制約のある立場で「こうだったら働きやすい」「やりがいを持って仕事を続けられる」と思えるような制度の検討も行いました。
 
プロジェクトが提言を行って間もなく、新型コロナの感染拡大により日本気象協会は全社的にリモートワークを実施する状況になりました。職員の安全を確保しながら気象コンサルティング・情報提供を継続するために、日本気象協会では手探りながら、急ピッチでリモートワーク環境の整備を進めました。リモートワークに適したITツールやネットワーク、セキュリティなどの検討材料として、プロジェクトの知見・提言が生かされることになりました。

プロジェクトメンバー:加藤綾子
「誰もが働きやすくやりがいのある会社で、事業収入と利益率を上げよう。」プロジェクトは、自身の育休経験から、これからの日本気象協会に必要な取り組みのはず!との思いを持ち、始めたプロジェクトでした。
プロジェクトを実施した2019年当時と比べると、私たちを取り巻く社会環境や働き方は大きく変化しています。
「経営ビジョン推進プロジェクト」は、社会や組織の変化の兆しを捉え、試行錯誤しながら日本気象協会にフィットする形を模索していく活動だと思っています。プロジェクトでのアクションが、中期経営計画の実現に少しでもつながっていれば何よりです。

日本気象協会の事業推進を加速するために、さまざまなアプローチで行ってきた「経営ビジョン推進プロジェクト」。どのプロジェクトにも共通するのは、ボトムアップで新しいことに挑戦していく好奇心と行動力です。
また、新たな挑戦に伴走するアドバイザーとしてのマネジメント層の存在も、このプロジェクトには欠かせません。プロジェクトの最終提言は役員の前でプレゼンテーションを行いますが、そのときのアドバイザーの頼もしさは格別です。
 
部署横断のプロジェクトだからこそ取り組める内容は、まだまだ社内にあるはずです。「経営ビジョン推進プロジェクト」が気になった日本気象協会メンバーは、ぜひ社内ポータルから詳細情報をチェックしてみてください。
 
今後も気象や日本気象協会の仕事にまつわるさまざまなエピソードをお届けしていきます。社内の皆さんからは、こんな企画を読んでみたい!というリクエストもお待ちしています。日本気象協会 公式note「Harmonability style」をどうぞお楽しみに!

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