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さいそう?もはや?言葉と向き合う気象コンサルタントたち

2023年の桜シーズンも終盤に近付いてきました。今年の桜前線は3月14日の東京からスタートし、今年の桜は多くの地点で観測史上最も早く(タイを含む)で開花や満開を迎えています。
 
札幌では4月15日に桜が開花しました。平年より16日早く、昨年と比べても8日早い観測で、1953年の統計開始以来、最も早い開花となりました。今春の暖かさによる影響は北海道でも大きく、道内各地で記録的な早さでの開花となるところが多い見込みです。

日本気象協会では、全国各地の気象コンサルタントたちが社内掲示板やチャットなどを活用して、気象や季節の話題について情報共有や意見交換をしています。例えば「こんな気象の過去データを探しています」と尋ねれば全国のメンバーから回答があるなど、立場や世代を超えた活発な交流があるのが特長です。

冒頭でもお伝えした通り、今年の桜は各地で観測史上最も早く開花・満開を迎えています。
それを受けて、社内の掲示板でAさんから質問がありました。

Aさん:
今年の桜の開花・満開について、社内の複数の方が「最も早い」の意味で「最早」という単語を使用されていますが、これは気象業界の専門用語なのでしょうか?
 
私は出版業界から転職してきたので気象用語にはまだまだ疎いのですが、普通は「最早」は「もはや」と読みますし、「最早」(もはや)で使う場合でも「もはや」とひらがなに開いて表記するようにと書かれているので、「最早」の単語を見ること自体が一般的にも少なくなっているように思います。
 
「最も早い」の意味であれば「最速」(さいそく)を使うのかな?と思いコメントしました。

Aさんの疑問、確かに気になります。
この質問に対して、長年気象業界で働くBさんからこんなコメントがありました。

Bさん:
気象庁の「生物季節観測 」で、かねてより「最早値(最早年)・最晩値(最晩年)」として最も早い、最も遅いが表現されているので気象業界の専門用語といってもいいと思います。
この「最早値」(さいそうち)から転じて「最早」(さいそう)としているのでしょう。
これはいわゆる天気予報の言葉ではないので「予報用語」には入っていません。
 
桜の開花は動作のあるものではないので「速」は使われません。
「遅い」は時期時刻の場合「晩い」とも書かれるため、後者が採用されていると思われます。
 
ただ、気象庁も「最早」を読むときは「さいそう」という見解をしていないようで「最も早い」と読むそうです。

なるほど…!
さらに、メディア向けの気象解説の方針を決める担当者のCさんからは、こんなコメントがありました。

Cさん:
私も気象業界歴が長いので、「最早」という言葉を、特に疑問を持たずに使用していました。一般的な言葉としては、Aさんの言う通り「もはや」と読むのが一般的ですね。

今後は、例えば「最も早い(最早)観測です」とするなど、気象情報を発信する立場として、心遣いのある表現をしていきたいと思いました。

私たち気象コンサルタントは「気象のこと(現象や用語など)を正確にわかりやすく伝える」のが使命です。
ただ、気象の世界に長ければ長くいるほど、その使命を忘れてつい専門用語を使ってしまいがちなので、「正確に分かりやすく伝える」から遠ざかることのないように、常に気を付けなければいけないですね。

今回疑問を書き込んでくださったAさんをはじめとして、他の業界から来られた方々にはぜひこのような疑問をどんどん投げかけていただきたいです。

気象のプロフェッショナルたちは、専門的な内容ほど分かりやすく、正確に伝えることを大切にしています。日本気象協会は、気象コンサルティングで欠かせない「言葉」について疑問を持つことを忘れずに、今後も考え続けていきたいと思います。
 
日本気象協会 公式note「Harmonability style」では、今後も気象と向き合うプロフェッショナルのエピソードや、季節に関する話題をお届けしていきます。
 
*会話の内容は本人の許可を得て、本記事用に一部を編集した上で公開しています

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