杜の都・仙台から届ける 東北の空模様 ~先輩たちは「経験の図書館」~
日本気象協会には、各拠点や部門に「広報委員」という役割を担当しているメンバーがいます。「広報委員」は、自分の部門や支社・支店で何か新しい取り組みやニュースなどがあったときに、本社の広報メンバーと共有を行いながら社内外に情報を発信できるよう整えていく、いわば「情報のハブ」となる存在です。
今回の日本気象協会 公式note「Harmonability style」では、宮城県仙台市にある日本気象協会 東北支社で広報委員を務めるメンバーに、気象の仕事で大切にしていること、東北支社ならではの取り組みや魅力を聞きました。
奥羽山脈を境に大きく天気が異なる東北地方
(齋藤)私は福島県の二本松市出身です。二本松市は冬になると大雪が降る会津と、乾燥した空っ風の吹く浜通りに挟まれた中通りにあります。風向き次第で雪の量が変わるため(福島・郡山で大雪、二本松は晴れているなど)雪雲が流れ込むかどうか、天気予報を確認する習慣が昔からありました。
(神林)東北地方全体で見ても、奥羽山脈をはさんだ太平洋側と日本海側で天気が大きく異なることが多いです。私たちは地形の影響を特に意識しながら、日々の気象予測に向き合っています。山の斜面にぶつかる風向き次第で天気や気温がガラッと変わるため、地形図とにらめっこしながら気象データを分析しています。
「声で覚えてもらえる」気象解説と営業活動の強み
(齋藤)私たちの主な仕事は気象解説原稿の作成や電話での気象コンサルティング対応、tenki.jpの記事執筆、ラジオ出演などです。テレビ局で気象キャスターとして天気予報を解説するお仕事もあります。これに加えて、営業担当者としてテレビ局やラジオ局、新聞社などを訪問し、お客さまの声を直接お聞きすることもしています。お客さまから直接「提供している情報が分かりやすかった」「役に立った」と言っていただけることが励みです。
(神林)ある放送局のラジオで気象解説を担当していたのですが、営業で系列のテレビ局に行ったときに「ラジオで耳なじみがある声だったので、神林さんだと分かった」と言われたこともありました。ラジオでは顔は見えませんが、声で覚えていただけるのはとても嬉しいですし、営業活動をする上でも強みになると感じます。
情報の先には受け取る人がいるから、言葉選びを大切にする
(神林)普段仕事をするなかで大切にしているのは「私が伝えた情報の先には、受け取る相手がいる」ということです。たとえばラジオ放送だと、私の言葉選びひとつで、明日の予定を変更する人がいるかもしれない。荒天時には早めの避難を検討する人がいるかもしれない。天気を伝える責任を感じながら、出来るだけ多くの人に届く言葉を選ぶように気を付けています。
(齋藤)言葉を選ぶ、という意味では「原稿を書く時にはなるべく同じ表現を多用しない」ということも意識しています。たとえば「晴れて暑くなる」といった内容でも、いろいろ表現を変えて、どのような言葉であれば興味を持っていただけるか、そして誤解なく伝わるかを日々工夫しています。防災情報を伝えるときには特に強い責任感を持ち、適切な言葉を選びながら危機感を伝えるようにしています。
東北ならではの季節の話題を動画で届ける
(齋藤)東北支社には、テレビ局と同じ機材を備えた動画スタジオがあります。ここで撮影・編集した動画をテレビ局のSNSでご紹介いただいたこともあります。現在は東北ならではの季節の話題(お祭りや植物の話題など)を発信することが多いですが、今後は日々の気象解説を定期的に届けていくことができたらと考えています。動画は本社のtenki.jpチームや、同じ北日本にある日本気象協会の北海道支社とも連携しながら、企画を進めています。
(神林)動画での気象解説は、これから力を入れていきたい取り組みのひとつです。ラジオ放送とはまた違った情報の伝え方を模索し、色々な表現に挑戦していきたいです。個人的には、耳の聞こえない方にも動画で分かりやすく気象情報を伝えたいと思い、手話の勉強をしています。
先輩たちは「経験の図書館」
(齋藤)東北支社はメンバー34名のうち、女性比率が44%※で、女性が多く活躍しています。※2023年9月時点、男女比は管理職を除く
比較的若いメンバーも多く、ベテランの持つノウハウを共有しながら次世代の育成を進めています。
日本気象協会の先輩たちを一言で表すと…「経験の図書館」です。どの方も自分にない経験をしてきて、自分では気が付かなかった視点で天気を見ることができる方ばかりだと感じています。東北気質もあってか少しシャイなところもありますが、過去こういうときはどうでしたか?と聞くと色々なことを教えてくれるので、まさに図書館に赴いて本を手に取るように、積極的に質問するようにしています。
(神林)気象が大好きで、経験豊富な先輩がたくさんいるのが日本気象協会の魅力だと思います。先ほどの「言葉の選び方」でも、「どんな表現であれば一般の方が聞いて分かりやすいのか」を、先輩にたくさん聞いて考えています。
「芋煮会天気情報」は秋の風物詩
(齋藤)東北支社では、コロナ禍以前は秋に芋煮会[山形県や宮城県などで行われる、屋外で鍋料理を皆で食べる季節行事]を有志メンバーで行っていました。芋煮には山形風(牛肉・しょう油ベース)と仙台風(豚肉・味噌ベース)がありますが、東北支社の芋煮会ではその日の料理人によってアレンジを加えるなどして楽しんでいました。実は、東北支社では「芋煮会天気情報」なるものも手掛けており、毎年予報を新聞社へ提供しています。天気・気温・風の強弱から芋煮会の開催に向いている天候かどうかをおすすめしています。
(神林)東北支社は広瀬川の近くにありますが、広瀬川は芋煮会の会場としても有名です。また、東北というと日本酒のイメージがあるかもしれませんが、実はワインやクラフトビールも豊富なんです。私は特にビールが好きで、推しブルワリーがたくさんあります。東北へお越しの際には、ぜひグルメと一緒においしいクラフトビールを楽しんでいただけたらと思います。
「芋煮会天気情報」は東北に拠点を持つ日本気象協会だからこそ発信できる、ユニークな情報。これからも、気象データを活用して東北ならではの気象・防災・季節に関する情報を届けていきます。
今後も日本気象協会の仕事にまつわるさまざまなエピソードをお届けしていきます。社内の皆さんからは、こんな企画を読んでみたい!というリクエストもお待ちしています。今後も日本気象協会 公式note「Harmonability style」をどうぞお楽しみに!