【プロフェッショナルパートナーの素顔】洋上風力を支える「風況調査」のリーディングカンパニーを目指して
日本気象協会を支える気象・環境・防災のプロフェッショナルを紹介する「プロフェッショナルパートナーの素顔」。今回は国際協力事業でのキャリアを経て、洋上風力発電の発展を支えるプロフェッショナルパートナーが語ります。
仙台市出身 伊坂幸太郎さんの本が愛読書
出身地は宮城県仙台市です。生まれてから大学院卒業までの24年間を仙台で過ごしました。仙台の夏は過ごしやすく、時には“やませ”の影響で寒いほどです。関西から来ていた大学の友人が、6月までストーブが手放せなかったと言っていたのが印象的でした。仙台は冬でも積雪が少なく、年に2~3回のドカ雪以外はあまり路上に積雪はありません。その代わり奥羽山脈を越えてきた西風は非常に強く、自転車をいくら漕いでも前に進めないほどでした。
自分の生まれ故郷である仙台を舞台にした作品を多く出版している、伊坂幸太郎さんの本は欠かさず読んでいます。その中でも「砂漠」という作品は、大学生時代の自分と重なる事が多く、好きな作品の一つです。
気候学を専攻し インドネシアの降水量を研究
大学・大学院ともに地理学を専攻し、その中でも気候学分野の研究を行いました。研究のテーマは「エルニーニョとインド洋ダイポールモード現象がインドネシアの降水量変動に及ぼす影響について」。研究自体は既存観測データを用いた分析活動でしたが、大学の実習や他学生の手伝いで、観測機器を使った実際の観測活動も行っていました。
気象に興味を持ったきっかけは、高校時代にさかのぼります。高校生の時に気候変動枠組条約の「京都議定書」が締結されたことがきっかけで、地球環境や気象に興味を持ちました。大学の研究でインドネシアを訪問したときには、自分がこれまで実感した事がない気候・気象(例えば時間雨量約100mmの熱帯スコールなど日本では体験できない現象)を肌身で感じました。この経験もあって、日本や世界のさまざまな気象に関わる仕事を目指すようになりました。
JICAで気象に関する国際協力事業を担当
大学院の卒業後、2006年に独立行政法人国際協力機構(JICA)に15年勤めました。JICAでは主に防災事業に従事し、特に気象に関係する国際協力事業、例えば無償資金協力を通じて途上国に気象レーダーを建設するプロジェクトや、技術協力を通じて現地気象局職員の気象予報能力を向上するプロジェクトなどの担当を務めました。
日本気象協会がJICAのプロジェクトを受け持つこともあり、その時はJICA側の担当として日本気象協会の職員と一緒に現地に出張するなど、協働して事業を進めたこともありました。
「現場寄りの仕事がしたい」と思い日本気象協会への転職を決意
JICAではプロジェクトマネジメント中心で現場に出向く事が少なかったため「もっと現場寄りの仕事をしたい」という思いが募るようになりました。そんな折、現場で活動されている日本気象協会の方々を見て「まさに日本気象協会の仕事が自分の目指す道に合っている」と考え、日本気象協会で働きたいと思うようになりました。その後、縁あってキャリア採用で日本気象協会に転職し、現在に至ります。
日本気象協会に入社してからは、環境・エネルギー事業部 環境解析事業課に所属し、主に陸上・洋上風力事業の風況調査を担当しています。特に洋上風力発電事業は、日本ではまだ黎明期にあり、機器や手法など新しい事柄が多いため手探り状態で日々業務を遂行していますが、風況調査のリーディングカンパニーとなることを目指し、グループ一丸となって精進しています。
JICA時代の「プロジェクト全体を俯瞰するスキル」が今も役立っている
JICAでは主にプロジェクトの上流にあたる方針やフレームワークを検討・決定する立場にあったため、プロジェクト全体を俯瞰して見るスキルを培う事が出来ました。日本気象協会では、コンサルタントとして具体的な専門知識や技術は必要不可欠ですが、上流部分(顧客)の要望・課題解決に向けた視点で業務を遂行することも重要であると感じており、JICAでの経験を活かすことが出来ていると感じています。
周囲の知見を把握し判断することを大切にしている
現在はマネージャー(管理職)の役割も担いながら、風力発電事業の風況調査の受注業務の全体調整や個別案件を担当しています。個別案件では、風況調査機器の設置場所の選定から設置工事の発注、実際の機器の設置・調整等の現場対応を担う事も多く、設置業務が集中する時期には、出張が連続し、大半を現場で過ごす月もあります。
マネジメントをするときに大切にしていることは…転職者ということもあり、自分自身や一部だけの知識・経験だけで判断せず、課員や上司・先輩職員の知見を可能な限り把握した上で判断することを心がけています。また多忙な部署なので、課員の業務状況のみならず、心身の状況も把握するよう努めています。
洋上風力発電は再生可能エネルギーとして注目されている一方、地元の協力を得ながら慎重に事業を進める必要があります。風況調査も同様で、地元の行政や企業、周辺住民などさまざまな関係者と接する場面があります。多くの地元の方々が風力発電への期待を語り、私たちの取り組みに協力的な姿勢を示してくださいます。関係者の方々との交流は、「気象」を生業とする日本気象協会の仕事と社会とのつながりを実感できる印象深い出来事の一つです。
日本気象協会の人たちは“真面目”
日本気象協会で働く人たちを一言で表すと…“真面目(まじめ)”の一言に尽きると思います。前職時代の日本気象協会の印象も “真面目”でしたが、実際に転職してきて、その印象は確信となりました。真面目な方々が多く、仕事に対する余念がないと感じることが多いです。一方で、気さくな方も多くメリハリがしっかりしていて働きやすい職場だと感じています。
同僚と一緒に出張に出ると、おのずと仕事以外の雑談をする時間も増えるものです。長期出張が多く、配属当初からコミュニケーションの場を得る機会にも恵まれたこともあり、転職組ではあるものの、すんなりと職場に溶け込むことができました。同僚とは普段から仕事以外の話題も積極的に話すようにしています。
ダイナミックな気候、気象、自然環境を肌で実感する経験を
これから気象の仕事を目指す皆さんへのメッセージとして…日本でも世界でも、どこでもいいので自分が生活しているエリアから飛び出して、普段見聞きしないようなダイナミックな気候、気象、自然環境を肌で実感することをおすすめします。テレビやインターネットで得られる情報も重要ですが、自分の五感をフル活用して養われた感性も、自身の一生の財産になると思います。
気候変動対策、再生可能エネルギー、防災など、日本が抱える解決すべき課題の多くは地球環境、とりわけ気象・気候が起因することが多く、これらの現象の解明が必須です。日本気象協会のビジネスはこれらの課題解決に貢献しているものが多くありますので、ぜひ興味を持っていただけたらうれしいです。