【プロフェッショナルパートナーの素顔】航空レーザ測量技術を用いた「洋上の鳥類調査手法」を確立していきたい
日本気象協会を支える気象・環境・防災のプロフェッショナルを紹介する「プロフェッショナルパートナーの素顔」。今回は、新たな鳥類飛翔状況調査の技術開発に挑戦中のプロフェッショナルパートナーが語ります。
農学部で動物学を専攻 卒業研究のテーマは「ジビエ」
出身は神奈川県横浜市です。横浜というと「海」の印象が強いですが、実家は内陸部にあり周囲は雑木林に囲まれています。横浜市中心部より少し気温が低く、風がよく通るなぁという印象です。
大学時代は農学部で動物科学を専攻し、卒業研究ではジビエ(主に鹿肉)の性質と加工法について研究していました。日本気象協会のなかではなかなか珍しい研究内容かもしれません。自然関係の法律や制度の勉強もしていました。
日本気象協会が環境分野の仕事をしていることを就活中に知り、応募
日本気象協会に就職を決めたきっかけは…就職活動の時は、気象に関する仕事をしようとは全く思っていませんでした。環境系のお仕事を探していた時に日本気象協会が「おすすめの情報」に出てきて、応募したら縁あって現在の職に、という流れです。最初は天気予報の会社がなぜ「おすすめ」に?と思ったのですが、調べていく中で日本気象協会が環境やエネルギー分野の業務を行っていて、さらにバードストライク監視サービスをはじめとする鳥類調査を行っていることを知りました。もともと野生動物保全に興味があったため、やってみたい!と思いエントリーシートを提出したことがきっかけで、今に至ります。
若手有志によるワーキンググループに参加し、快適な職場環境を目指す
入社後は本社の環境・エネルギー事業部環境アセスメント課に所属し、風力発電事業に係る環境アセスメント業務や、風力発電施設の建設後にバードストライク発生の有無を確認する事後調査業務に携わっています。また事業部の若手有志による業務改善ワーキンググループにも参加しています。ワーキンググループのなかでチームを立ち上げて、オフィスの室温・湿度を調査し、快適で仕事をしやすい職場環境を目指す取り組みなども行っています。
航空機を利用した新たな鳥類飛翔調査にチャレンジ
風力発電は、エネルギー分野のなかでも現在大きく伸びている事業です。風力発電は再生可能エネルギー推進に欠かせないものですが、例えば洋上風力発電を実現するには、海洋に関わるあらゆるステークホルダーと協働・協議しながら進めていく必要があります。その過程では「鳥類への影響」が問題視されることがあります。日本列島にはさまざまな鳥類が生息しており、渡りのコース(渡り鳥が繁殖地と越冬地との間を定期的に移動する経路)にもなっています。しかし、日本近海の洋上においてどのような鳥がどの程度生息しているかは、十分に解明されていません。そこで日本気象協会では、新たな手法として「航空機を利用した鳥類飛翔状況の調査」にチャレンジしています。
これは「航空レーザ測量技術を用いた洋上の鳥類調査手法」というもので、中日本航空株式会社と共同で研究を行っています。「航空レーザ測量技術」とは航空機からレーザ光を照射し、物体にあたって跳ね返ってくるレーザ光により空間を立体的に計測するものです。今回の研究ではその技術を用いて洋上の鳥類の飛翔高度を計測できるか検証することを目的として調査を行いました。調査の結果、鳥類の飛翔高度を高精度に計測することができたことから、この技術を用いることで洋上の鳥類調査で得られる情報の密度や精度を上げることができるのではないかと考えています。
航空機にはカメラも積んでいて、レーザとカメラの同時観測をすることが可能です。航空写真から鳥類種の判別ができるので、レーザ測量の結果から飛翔高度を算出することもできます。研究者の方や、洋上で風力発電事業を計画していて環境影響評価を必要とされている方にご活用いただけたら嬉しいです。
学会発表では結果の見せ方に苦労、何度も練習を重ねる
昨年9月に開催された日本鳥学会で、本研究の成果を発表しました。学会での口頭発表時には、結果の見せ方に苦労しました。今回の調査では、航空機センサス・船舶センサス・定点センサスを平行して行っていたので、全体のストーリーを崩さずにそれらの結果を15分の発表時間の中に入れるのが大変でした…。何度も練習し、さまざまなコメントをいただいて最終的な形になったのは発表の2日前でした。発表資料を作っていたときはどのような反応が返ってくるのか想像できず不安に感じていたのですが、発表後にお声がけいただくなど多くの方に興味を持っていただき、発表を通してこの技術の有用性をお伝えできたと実感することができました。
今後も技術開発を続け、航空レーザ測量技術を用いた洋上の鳥類調査手法を確立していきたいと思っています。海外では事例がありますが、日本ではまだまだ事例が少ないため、今後も研究を続けて一つの調査手法として確立し、洋上の鳥類保全に向けてさまざまな海域の調査で使っていただけるようにしていきたいです。
「知的好奇心が高い」日本気象協会の先輩たち
日本気象協会の先輩たちは「知的好奇心が高い」イメージがあります。皆さん色々なバックグラウンドをお持ちなので、一つの会話からいろんな方面へ話が展開していってつい話し込んでしまうことも…。気になったことは質問し、興味深く聞いてくれる人が多い印象です。
興味のあることを中心に、少し離れた分野のことまでとりあえず経験してみる
気象に関する仕事に関心のある皆さまへのメッセージとして…私はもともと気象分野を目指していたわけではないので、「やりたい仕事を目指すなら」と読み替えてお答えすると、興味のあることを中心にしつつも少し離れた分野のことまでとりあえず経験してみることがいいのではないかなと思います。いつどこでその知識や経験が役に立つかはわからないですが、まずは数を増やして引き出しを作っていくと説得力を持って自分の考えを伝えられたり、思い通りに動けたりする気がしています。まだ私も人生経験が多いわけではないので、これから確かめていくことにはなりますが…(笑)。