気象ファンなら一度は訪れたい 広島市江波山気象館
気象に関するミュージアム、と聞いて、皆さんはどんな場所をイメージしますか?科学博物館やプラネタリウム、または虎ノ門にある「気象科学館」を想像する人も多いかもしれません。今回の日本気象協会 公式note「Harmonability style」では、全国でも珍しい気象に特化した博物館である「広島市江波山(えばやま)気象館」をご紹介します。
広島市江波山気象館は、被爆建物でもある旧広島地方気象台の建物を保存・整備し、平成4年に開館した気象と科学をテーマにした博物館です。家族連れや団体のお客さまなど年間5~6万人が訪れ、気象や科学の奥深さに触れています。
子どもに人気の「気象体験コーナー」
2階の「気象体験コーナー」は、お子さんに大人気のエリアです。風速20メートルの風を体験できる「突風カプセル」、水滴で人工的につくった雲の中に入る体験ができる「タイフーンボックス」、お子さんによってはトラウマ級と噂の「フランクリンの実験室」では、30万ボルトの落雷実験が体験できます。ちなみに「気象体験コーナー」には、日本気象協会からも、雨に濡れずに豪雨・暴風体験ができるARアトラクション「ヘラセオン」を提供しています。
週末や夏休みにはサイエンスショーが行われ、上昇気流や気圧のメカニズムを実験で知るなど、楽しみながら学べるプログラムが催されています。
ほかにも、1階には「映像コーナー」や気象に関連する各種資料・書籍などを収蔵している「お天気情報コーナー」があり、大人も子どもも楽しめる施設となっています。
書籍コーナーでは、日本気象協会が昔発行した書籍を見つけることができました。また「天気×儲け」をタイトルにした本を発見し、思わず手に取ってしまったり…(皆さん、読んでみたくないですか?)「気象」に関する書籍をあらゆる角度から収蔵しているのは、さすが、気象専門の博物館ならではです。
平和の大切さを伝える「被爆建物」としての存在
旧広島地方気象台は、昭和9年に広島県立広島測候所として建築され、昭和14年に国営移管、昭和62年に広島市中区八丁堀の合同庁舎に移転しました。昭和20年8月の原爆により被災しましたが、職員による気象観測は1日も休むことなく続けられました。同年9月、広島は枕崎台風にも見舞われました。この時の様子は、柳田邦男の小説「空白の天気図」に描かれています。
2階の「気象台のおもいで」エリアでは、原爆の爆風で吹き飛ばされ、壁に刺さったガラス片が残されています。気象台の当番日誌などから、原爆被害の様子を伺い知ることができます。生々しい傷跡は、当時の惨状を今に伝え、平和の大切さを訴えかけます。また残された資料からは「どんな状況であっても気象観測を途絶えさせない」という、当時の気象台職員の強い思いを感じることができます。
江波山は、爆心地から約3.7kmの距離にありました。建物1階には被爆保存壁が残っています。爆風で曲がった窓枠もそのまま保存されており、原爆の衝撃を物語っています。
広島市江波山気象館の建物は鉄筋コンクリート造りで、戦前の建物の特徴と新しいモダンなデザインを併せ持つ、建築技術的にもデザイン的にも非常に優れた建物です。平成12年には広島市の重要有形文化財に指定されており、気象ファンのみならず、建築ファンも足を運ぶことで知られています。
現存する被爆建物として、保存するだけではなく利活用しながら歴史を伝えている…そんなところも、広島市江波山気象館の特徴のひとつです。
「Harmonability style」的注目ポイント!江波山気象館での「気象観測」
ここまで、広島市江波山気象館についてご紹介してきましたが、ハモスタ的イチオシポイントは他にも。
広島市江波山気象館の屋外には気象観測器が設置されていて、気温・湿度・降水量、風向・風速などの観測を行っているのです。そして1階にある「お天気情報コーナー」には気象予報士が常駐し、この観測データも参考にしながら、広島市江波山気象館独自の天気予報を発表しています。
観測から予報までの実際の流れを目の前で見ることができる場所は国内でも珍しく、貴重なものといえそうです。
先日のnoteでもご紹介した日本気象協会中国支店では、広島市江波山気象館が開館した平成4年から気象予報士の派遣や観測機器の設置・メンテナンス、天気予報のシステムなどをサポートしています。
歴史ある建物なので、観測機器の設置の際には建物に傷をつけたりすることがないよう、工夫しながらケーブルを引いています。1階の屋外スペースには温湿度計が、屋上には風向風速計や日照計、雨量計が設置されています。気圧計は室内のラックに設置されています。
気象台ならではのトリビア 十字型の観測塔に隠されたヒミツ
屋上の観測塔は十字型をしているのですが、実はこの十字「東西南北」を指して建っているんです!建物が不思議な形をしているので、屋上に出たときに方角がすぐ分かるように、あえてこの形にしているんだそう。気象台ならではの建築トリビアです。
広島市江波山気象館のホームページでは、発表している天気予報のほかにも、気象にまつわるデータや豆知識が多数掲載されています。気象ファンなら見ていて飽きない情報が満載です。
記事の後編では、広島市江波山気象館の「お天気情報コーナー」を担当している気象予報士の田口良人さんと、広島市江波山気象館の主幹学芸員である脇阪伯史さんへのインタビューの様子をご紹介します。
今後も気象や日本気象協会の仕事にまつわるさまざまなエピソードをお届けしていきます。社内の皆さんからは、こんな企画を読んでみたい!というリクエストもお待ちしています。日本気象協会 公式note「Harmonability style」をどうぞお楽しみに!