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絶景写真が撮れる気象条件とは?~風景写真家 星野佑佳さんに聞く「めぐる四季の光彩」~【日本気象協会2025年カレンダーコラボ企画】

日本気象協会は「Harmonability~自然界と調和した社会の創生~」をメッセージとして、風景写真家として活躍されている、星野佑佳さんにご提供いただいた写真を掲載したオリジナルカレンダーを制作しています。
 
前回の日本気象協会 公式note「Harmonability style」では、星野さん流の気象データ活用術や、風景写真を撮影するなかで感じる気象や自然環境の変化についてお話いただきました。後編となる今回は、日本気象協会2025年カレンダー「めぐる四季の光彩」にご提供いただいた写真について、撮影時の気象条件や印象に残っているエピソードをお聞きしました。

写真家 星野佑佳(ほしの ゆか)
京都市生まれ。写真家、フォトエッセイスト。同志社大学法学部卒業。2000年から国内外を放浪しながら撮影を開始。2005年より地元・京都の風景や風物詩の撮影を手掛け始める。2018年、隔月刊『風景写真』誌に連載中のフォトエッセイを集めた『撮り旅(明日、どこ行こう)』を上梓。Nikonのカタログや一般誌、書籍、テレビなどでも多数の作品を発表している。季節の情報も豊富と、全国を飛び回る撮影の日程計画に、天気予報専門メディア「tenki.jp」のアプリを活用している。

1-2月:朝日に染まる雲海(京都府福知山市)

この写真の撮影地に行くためには細い悪路の山道を走行しなければならず、雪深い時期になると行きづらくなります。歩いて登ることも可能ですが、撮影機材もあり、私は車で行くことがほとんどです。
撮影時は適度な積雪後で、田んぼが白くなり、木立の雪は解け、白黒のメリハリが生れ、いつもと違う光景が撮れました。この場所は濃霧注意報が出ると自分が霧に包まれホワイトアウト状態になってしまうことが多いので、さじ加減がポイントです。湿度があるけれど濃霧注意報は出ておらず、気温が低い時が狙いどきです。

たっぷりと満ちている雲海も魅力的ですが、ここは、下の木々や田んぼが見える具合の薄い霧の方がおすすめです。
また、今回の写真とは別のシチュエーションですが、木々の隙間から斜光(光芒)が出るのも、この場所の魅力です。その場合は、さらに霧が薄くないと光芒になりません。たっぷりと満ちた雲海だと光芒は出ないんです。


星野さんから雲海に詳しい気象予報士に質問!

3-4月:青空の下の桜と鳥海山遠望(山形県酒田市)

地元の方が朝の散歩道にしている桜並木です。カメラマンもほとんどおらず、ゆったりした長閑なひと時でした。
桜並木はずっと続いているのですが、なかでも形のよい、たわわに花を咲かせている二本を選び、背景に冠雪の鳥海山を配置しました。
 
桜を順光で撮ると、べったりしてしまうのですが、朝一番の光は別です。日の出の赤味がほんのりと桜の花を染め上げ、背景の青空や冠雪の白色ものびやかに写ります。
この時間はわずか数分ほど。日の出の光が届くまでは、桜はまだ影で青染み(それはそれで魅力的ですが)背景の山とのメリハリがついていませんし、日の出から少し時間が過ぎると、光は白くなり、桜が背景に張り付いたようにベッタリしてしまいます。

5-6月:空を映す水を張った扇棚田(熊本県阿蘇郡産山村)

見晴らしの良い場所に作られた、形のよい扇状の棚田は、星や日の出と共演するなど、色々楽しめます。
初夏、田んぼに水が張ると、そこに空の色が映り込み、見応えが倍増。水面が揺れない、風のない日に、青空と白い雲を映り込ませて撮りました。

7-8月:夏空と波照間島の海(沖縄県八重山郡竹富町)

波照間島は、石垣島からフェリーで日帰り可能ですが、晴れていても波が高いとフェリーが欠航してしまいます。
今年、夏っぽい海を撮るために訪れた沖縄ですが、日程に余裕がなく波照間島へ渡れるか不安でした。なんとか行けましたが、前日はフェリーが出航したものの、波が高く、途中で石垣島に引き返したそうです。
 
新月前後に訪問したので、潮の干満差が大きく、それによって、写真に写っている岩の見え方が全く違うのも驚きでした。
潮が満ちると岩の出ている部分が減り、あまりアクセントにならないのです。
一泊して早朝も見に行きましたが、まだ太陽の光が届ききらず、お昼位の海と比べると鮮やかさが足りません。夕方は逆光で、せっかくの海の色がわかりづらかったりします。
青い海と白い雲を写すなら、お勧めの時間帯は早すぎない午前中からお昼過ぎ。潮が引いている方が良さそうです。

沖縄へは何度も行っているのですが、実は波打ち際まで近づいて砂浜を歩くのは、たぶん今回が初めて。
ヤドカリが歩いていたり、波に光が描くキラキラ模様に見とれたり、砂浜の砂が打ち寄せ引き返す波に翻弄される様子も面白く、何時間も撮り続けました。

9-10月:蔦沼の紅葉 (青森県十和田市)

カメラマンに大人気の蔦沼。晴れた朝には、対岸の紅葉が朝日の順光線に赤く染まる様子が大人気の秘密です。
この時は雨で紅葉のピークには少し早かったためか空いていました。
うっすらたなびく霧とリフレクションした紅葉風景を撮りましたが、真っ赤な紅葉が一本あり、小さいながらもアクセントになってくれました。

11-12月:摩周湖と樹氷(北海道川上郡弟子屈町)

冬の摩周湖は、第一駐車場より先は冬季通行止めになります。スノーシューを履いて、徒歩で雪道を進んでいきました。
ここは冬でも、樹氷に出会えるチャンスはそれほど多くありません。温泉の流れ込む屈斜路湖と比べても、霧氷となる確率が低いように思います。この時も、もうすぐ帰京のスケジュールが近づく中、やっと樹氷に出会えました。
まだ暗い時間に、木々を懐中電灯で照らしてみて樹氷がついていたら、嬉しさで寒さも吹き飛びます。


奇跡的な一瞬を捉えるために、星野さんが自然と向き合い、また気象条件を丁寧に読み解いて撮影に臨まれていることに驚き、感動しました。すべてのお写真は、ぜひカレンダーでお楽しみいただければ嬉しいです。星野さん、貴重なお話をありがとうございました! 今後も気象や日本気象協会の仕事にまつわるさまざまなエピソードをお届けしていきます。社内の皆さんからは、こんな企画を読んでみたい!というリクエストもお待ちしています。日本気象協会 公式note「Harmonability style」をどうぞお楽しみに!

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